西﨑紙販売本社の一室に、「伸展」と書かれた額が掲げられています。1978(昭和53)年頃作成の会社案内に掲載されたオフィス風景の写真にもこの額が写っています。関係者によれば、現在の本社に移転する以前、比治山の社屋にもこの額があったそうです。また西﨑和男がこの額を気に入っていたようだ、との話もうかがいました。しかしこの書の作者は不明、とのこと。これを聞いて筆者の好奇心が頭をもたげました。「伸展」という書の作者を確かめてみようと考えたのです。
とは言え、書に関しては全くの門外漢。額の左隅に書かれた署名も落款も解読できません。図書館で篆書(落款などに用いる中国の古書体)事典をひっくり返してみても、収穫はありません。そこで書に詳しい知人、Fさんに助けを求めることにしました。
署名と落款の写真を持ち帰ったFさんから数日後、連絡が入りました。「書を書いたのは森下南窓さんかも知れない」ということでした。
Fさんによれば、森下南窓は県美展審査員をつとめた書家で、大下学園祇園高等学校で、長年、書道専任教諭として生徒の指導にあたっていた人物です。奇遇にも、Fさんはかつて、祇園に住んでいた森下氏と親交があったのだそうです。
「南窓さんの息子さんが私と同年輩で、その方も書家です。今は引っ越されて、おつきあいが途絶えましたが」とFさん。残念ながら、森下南窓の本名までは覚えておられないとのことでした。
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