第一次オイルショックにより、日本の高度経済成長期は終焉(しゅうえん)を迎えました。インフレを抑えるため、日本銀行は公定歩合を引き上げを実施しました。1974年の公定歩合は実に9%(いわゆる「ゼロ金利政策」が続く今の公定歩合〈政策金利〉は0.1%)。企業の設備投資は抑制され、大型公共事業も次々と凍結・縮小されました。
オイルショックの嵐は、「紙」に関連する業界にも吹き荒れました。前回、トイレットペーパー騒動について触れましたが、トイレットペーパーが不足しているのであれば、他の紙類も同様に品薄であろうという憶測が広まります。では「紙」の需給状況は、実際にはどうだったのでしょう。
『紙の流通史と平田栄一郎/紙業タイムス社発行』に、次のような記述があります。
—トイレットペーパーの生産は前年比16%増、出荷は22%増という余裕のある需給状況にもかかわらず、一部マスコミの誇大報道と、石油供給削減による石油ショックが重なり、消費者の危機感を燃えあがらせる全国的な狂乱ぶりであった。通産省紙業課(村岡茂生課長)は、
・緊急増産の要請 ・出荷価格の凍結 ・関西方面への緊急輸送 ・重油の確保 ・投機防止法の指定品目指定 など緊急対策を実施し、騒ぎは(1973年)11月下旬にようやく収まった。しかし紙不足はトイレットペーパーに止まらず、エネルギーの10〜30%のカットにより供給力が激減し、上質紙、段ボール原紙を中心とした仮需要が猛然とわき起こった。—
高度経済成長期、紙の需要は毎年12〜13%増加し続けていました。メーカーは増産を続けていましたが、生産力の限界が見え初めてきたちょうどその時、オイルショックをきっかけに、いわゆる「買占め」や、将来の紙不足に備えるための「仮需要」などにより、需要が急激に膨らんだわけです。さらに、石油エネルギー不足によって生産力が減退したことが、紙の価格高騰に拍車をかけたのでした。
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