50歳代以上の方なら、「PC9801」という名称をご記憶ではないでしょうか。NECが1982(昭和57)年に発売したパーソナルコンピュータ「PC9801」は爆発的な売上げを記録し、以後「パソコン」という言葉が社会に広まっていきました。
パソコンが普及する以前、コンピュータは「電子計算機」と呼ばれていました。データ処理に電子計算機を導入しているのは限られた大手企業や一部の官公庁で、中小企業が電子計算機を業務に導入するということは、まずありませんでした。無論、紙卸業や印刷業も例外ではありません。在庫の管理は「帳面」で行うのが常識だったのです。
そんな時代に、商工センターに移転した西﨑紙販売は、在庫管理にコンピュータを導入します。そのきっかけとなった出来事を、かつて西崎紙販売で常務を務めた服部輝雄氏は以下のように語っています。
「比治山に本社があった頃、私は商品の出納帳を管理していました。ある日、お客さまから注文を受けた紙が、帳簿上は在庫があるはずなのに、倉庫にない、という出来事があったのです。日曜日に倉庫に籠って一日かけて探したところ、やっと該当する紙を見つけることはできたのですが、私は『これではいかん』と強く思いました。そこで新社屋移転を機に、社長に『ぜひ在庫管理にコンピュータを導入させてください』と“直訴”したのです」。
服部氏の説明をじっと聞いていた西﨑和男は、その場で「よし、服部に任せる。やってみろ」と決断を下しました。
落成した新社屋の倉庫では、落成記念行事としてペーパーショーが開催されました。最新設備とコンピュータ管理。自動化された倉庫を見て、招かれた顧客からは「これからは、こういう倉庫を持った(信頼性の高い)会社からでないと、紙は買えない」という賛嘆の声が聞かれたそうです。
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